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『真の預言者として』 改正教育基本法に抗議する緊急祈祷会での説教

2006年12月18日 改正教育基本法に抗議する緊急祈祷会での説教

『真の預言者として』 水草修治師(教団理事・社会局長)

『また、私は見た。もう一匹の獣が地から上って来た。それには小羊のような二本の角があり、竜のようにものを言った。この獣は、最初の獣が持っているすべての権威をその獣の前で働かせた。また、地と地に住む人々に、致命的な傷の直った最初の獣を拝ませた。』(ヨハネ黙示録13章11節、12節)


1.全体的状況:戦争の5条件がそろいつつある

 ここ数年、日本は米国の戦争に軍事的に荷担するために、着々と準備をしてきました。国は戦争をするための5つの条件を整えつつあります。一つは法的な備え、第二は軍事力の強化、第三は兵員確保のための経済政策、第四に愛国主義教育、そして第五に戦死者の顕彰施設の整備です。
 



①法整備という面では、武力攻撃事態関連三法 (注①)が2003年6月6日に可決され(注①)、有事関連七法が2004年6月14日に可決されています(注②)。また、戦時下の言論・思想統制のために、平成の治安維持法と呼ばれる共謀罪も、現在、国会で審議されています。 憲法については、9条の戦争放棄条項を取り除き、20条の政教分離条項を改変することが目論まれ、国民投票法案が準備されています。
 ②軍事力強化はどうか。経団連は2004年7月20日「今後の防衛力整備のあり方について――防衛生産・技術基盤の強化に向けて」という意見書を政府に対して提出し、武器輸出三原則の再検討を要求し、今年度ミサイル防衛システム開発予算に3000億円。そして2007年1月1日から防衛庁は防衛省に昇格。予算も発言力も強大になる。
 ③兵員確保のための経済政策とは、20-30歳台の貧困層を造ることです。イラク戦争に出て行った米軍兵士は、有色人種の比率が一般労働者における比率よりもはるかに高く、大学・専門学校に入ったことのある兵士は1割強しかいません。社会の最底辺層が戦地に送られているのです。でなければ、誰が戦争などに行くでしょう。志願制で兵員を確保するためには、20-30代の大量のワーキングプアが必要です。小泉改革の成果として、現在、全労働者の48パーセントは契約社員・派遣社員で、十数万の給料であえいでいます。正社員との給与格差は4倍です。自衛隊の場合イラク戦争に行けば、30万の月給と一日3万の手当てが付くのですから、魅力です。
 ④愛国主義教育。戦争を肯定し、国のために戦死することを栄誉あることと考える愛国心を子どもたちの世代から植え付けることです。日の丸・君が代の強制、そして今般の改正教育基本法は、その手始め。安倍政権の次のねらいは、教員資格を5年ごとの更新制とする法律を作って、国に楯突く教員を現場から排除することです。安倍総理は、マスコミが教員の不祥事をことさらに騒ぎ立てている状況に乗じて、教員資格は5年毎の更新制すると表明しています。
 ⑤靖国神社とは戦死者を顕彰しほめたたえることによって、戦争志願者を再生産するための施設です。
 政府は、このように法律、軍事力、兵員確保、教育、靖国神社という5つの面から、着々と「戦争ができる国」としての準備をして来ました。今晩は、特に、教育について、改正教育基本法について、みことばの光を当てたいと思います。


2.小羊のような姿で

 黙示録13章には竜、海からの獣、地から上ってきた獣という三匹の動物が登場します。竜はサタン、海からの獣とは貪欲な全体主義国家、地から上ってきた獣は「にせ預言者(国民の洗脳機関)」を象徴しています。まず、その姿に注目しましょう。
 「また、私は見た。もう一匹の獣が地から上って来た。それには小羊のような二本の角があり、竜のようにものを言った。」
 にせ預言者には、小羊のような二本の角があります。つまり、それは一見、うるわしいキリストに似た姿をしているということです。これは全体主義国家における、国民洗脳のための機関を指しています。ヒトラー政権でいえば、宣伝大臣ヨゼフ・ゲッペルスと「ドイツキリスト者」と呼ばれた国家主義的教会も、偽預言者として国民を洗脳して「ハイル・ヒトラー!」と獣を崇めさせました。 かつての軍国主義時代の日本でいえば、文部省や靖国神社が国民洗脳を担当しました。その時代の日本の教会は文部省の手下となって国民を天皇崇拝と戦争に向けて洗脳する役割を果たしました。
 にせ預言者は、人生の意義とはなにか、正義とは何か、愛とは何かと、人の生きるべき道とは何か、何が命を捨てるに値する至高の価値であるかについて声高に語ります。しかも、にせ預言者の教えは、キリストのように、うるわしく荘厳な言葉で、誰の耳にも美しく響くように趣向が凝らされています。
 かつて国家神道の経典、教育勅語は言いました。「爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭儉己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ學ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓發シ德器ヲ成就シ進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ常ニ國憲ヲ重シ國法ニ遵ヘ」と。いかにも立派で健全な道徳訓に満ちています。
 改正教育基本法の前文にも「美しい国」をつくるための美辞麗句が並んでいます。「われわれ日本国民は、たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家をさらに発展させるとともに、世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願うこと。この理想を実現するため、個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求し、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進すること。日本国憲法の精神にのっとり、我が国の未来を切り開く教育の基本を確立し、その振興を図るため、この法律を制定すること。」
 この改正教育基本法の背後には、「神の国発言」をした森善朗元首相が作った「教育改革国民会議」があり、17の提言 をしていますが、その中に「学校は道徳を教えることをためらわない」というのがあります(注③)。
 現在の日本において第二の獣として働いている機関とはなんでしょうか。明治以来の体質を引き継ぐ文部科学省はもちろんですが、TV、大新聞が政府に牛耳られているということをみなさんも感じるでしょう。たいへん危険なことです。むしろ信濃毎日新聞、東京新聞(中日新聞)など地方紙のほうがまともな報道をしているように思います。


3.竜のようにものを言う

 しかし、地からの獣は、「竜のようにものを言う」のです。それはどういうことでしょうか。主イエスは「悪魔は初めから人殺しであり、真理に立ってはいません。彼のうちには真理がないからです。彼が偽りを言うときは、自分にふさわしい話し方をしているのです。なぜなら彼は偽り者であり、また偽りの父であるからです。」とおっしゃいました(ヨハネ8:44)。ですから、にせ預言者はウソをつきます。あの「教育勅語」も前段はウソで塗り固められたものでした。
「朕惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ德ヲ樹ツルコト深厚ナリ我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世世厥ノ美ヲ濟セルハ此レ我カ國體ノ精華ニシテ教育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス次」
 「我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ」というのは、はるか昔ニニギノミコトが天のぬぼこをもって淡路島から始めて日本列島を造ったことを意味しています。無論ウソです。また天皇の先祖は「德ヲ樹ツルコト深厚ナリ」とありますが、これもウソです。『日本書紀』に、こんなことが書かれています。第二十代安康天皇は大草香皇子を殺し、自分の妻としました。すると、大草香皇子と皇后の息子眉輪王は安康天皇が酔っ払って、自分の母の膝枕で寝ているところを殺します。すると、安康天皇の弟、後の雄略天皇は眉輪王を殺す。雄略天皇は兄たちを何人も殺し、部下たちも惨殺し、自分の求めに背いて他の男と通じた婦人とその夫を焼き殺しました。また第二十五代武烈天皇は、妊婦の腹を裂き、人の生爪をはいでその手で芋を掘らせ、人を池の樋に入らせて流れ出てくるところを矛で突き殺して遊び、人の髪の毛を抜いて木に登らせてその木を切り倒すのを楽しみとし、いつも酒に酔いしれて遊びほうけて贅沢をして人民が飢えるのを気にもかけなかったそうです。どこが、「皇祖皇宗 徳ヲ樹ツルコト深厚」でしょうか。ウソです。
「我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世世厥ノ美ヲ濟セル」つまり「我が臣民は天皇を中心に忠と孝の道をもって万民が心を一つにし、世々にわたってその美をなしていきた」というのもウソです。現実には、明治維新のとき、日本列島に住むほとんどの住民は、天皇のことはほとんど知らなかったので、政府はしきりにキャンペーンをして天皇の存在を知らせなければなりませんでした。
 教育勅語はウソで塗り固めた歴史観をもとに、一見、美しい国民道徳を語っていたのです。小羊のなりをしながら、サタンの偽りのことばを吐くのが第二の獣です。今回の教育基本法「改正」もまた、タウン・ミーティングの「やらせ質問」などウソとごまかしに満ちたものでした。


4.最初の獣を拝ませた

 このたびの改正教育基本法にも、スルリと問題あることばが滑り込まされています。第四条、教育の目標の第五項です。「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」という問題のことばです。一見、それ自体を読めば、どうということはない。しかし、為政者がいう「伝統と文化を尊重する」とは何を意味しているのでしょう。ここが問題です。
 いうまでもありません。改正基本法の背景にある「教育改革国民会議」(H12.3)を始めた森喜朗元首相のことばでいえば、我が国の「伝統と文化」とは「日本は神の国である」ということ、つまり、天皇制、国家神道のことです。「朕惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ德ヲ樹ツルコト深厚ナリ我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世世厥ノ美ヲ濟セルハ此レ我カ國體ノ精華ニシテ教育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス」
 では、「伝統と文化」が天皇制・国家神道を意味するとすれば、「伝統と文化を尊重」するということを、教育プログラムとして具体化するとすれば、いったい何が行なわれるでしょうか。神社参拝が公立学校でカリキュラム化される可能性はきわめて高いのです。実際、元文部科学大臣町村氏は、テレビで公然と子どもたちが伊勢神宮に参拝できるようにしなければならないと話をしていました。
 改正基本法第15条には「国および地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならないこと。」とありますが、麻生外務大臣が靖国神社にかんしていうように、神社本庁に自発的に宗教法人格を返上させれば、神社参拝は宗教ではなく伝統であり文化であるということにされるでしょう。実際には、国が宗教法人と認めようが認めまいが宗教は宗教なのですが、彼らの理屈はそうではありません。国が宗教と認めなければ、それは宗教ではないのだから、神社から宗教法人格をはずせば、国民の代表たる首相が神社参拝しようと、公立学校の生徒に神社参拝させようと、違法行為ではないのです。
 地からの獣のねらいは明瞭です。すべての人々に、あの海からの獣つまり、サタンに取り付かれた国家を礼拝させ、海からの獣に献身させることです。海からの獣とは、すなわち、帝国主義的国家です。黙示録 13:12「この獣は、最初の獣が持っているすべての権威をその獣の前で働かせた。また、地と地に住む人々に、致命的な傷の直った最初の獣を拝ませた。」
 そして、帝国化した国家は、自らを神格化していますから、自分には国民にかんする生殺与奪の権があると考えています。国民は、すべからく国家に献身し、生命をささげるべきであり、それを拒む者は非国民だと断じます。教育勅語には、先の道徳訓の結びとして、有名なくだりが続いています。「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」


結び

 今国会において野党から政府が教育内容に深くくちばしを突っ込むことは、教育基本法第九条の「教育の不当な支配」にあたるのではないか、という質問が繰り返されました。質問に対して、総理大臣と文部科学大臣は、「政府が法律にしたがって行なうのだから、その支配は『不当な支配』にあたらない」と「合法イコール正当」論を繰り返しました。しかし、この答弁は、教育基本法成立の歴史的背景をふまえていない、実に不見識な答弁です。
 先の戦争において、政府は、「法律にしたがって」教育の不当な支配を行ったのです。「法律にしたがって」国民に天皇は神だ、日本は神国だと教え、神社参拝を強制して洗脳し、無謀な戦争に駆り立てたのです。敗戦後に定められた教育基本法が否定した「教育の不当な支配」は、このような政府が「法律にしたがって」行なう思想統制を意味しています。こうした苦い歴史的教訓を踏まえて、教育基本法は、教育に関する政府の務めを、教育内容に介入することでなく、教育環境を整備することにのみ制限していたのです(第11条)。
 しかし、今回の改正教育基本法で、国は天皇を中心とする「伝統と文化を尊重せよ」と、深く教育内容に介入しようとしています。我が国は、早晩、思想統制を是とする全体主義国家に転落するでしょう。今まさに、第二の獣は、小羊のなりをしてペラペラとサタンのことばをしゃべろうとしつつあるのです。警戒しなければなりません。
 この時代、教会の任務とはなんでしょうか。
 第一に、教会は真の預言者として、しっかりと真理のことばを伝えつづける任務があるのです。教会の教育の任務です。教会内の信徒たち、教会学校に語るとともに、さまざまな手段を通して国民に、地域社会に、政府にも語る必要があります。
 第二に、教会が祭司として、教育基本法再改正を目指して祈るべきです。がっかりしている場合ではありません。前を向いて、天を見上げて「改正教育基本法」が再びまともなものに改正されるように祈ることです。私たちの神は生ける神です。

注①:武力攻撃事態対処関連三法 ①安全保障会議設置法の一部を改正する法律 、②武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律、 ③自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律
注②:有事関連7法 ①国民保護法②米軍行動円滑化法、③特定公共施設利用法④国際人道法違反処罰法、⑤外国軍用品海上輸送規制法、⑥捕虜取扱法、⑦改正自衛隊法
注③:①教育の原点は家庭であることを自覚する②学校は道徳を教えることをためらわない ③奉仕活動を全員が行うようにする ④問題を起こす子どもへの教育をあいまいにしない ⑤有害情報等から子どもを守る ⑥一律主義を改め、個性を伸ばす教育システムを導入する ⑦記憶力偏重を改め、大学入試を多様化する ⑧リーダー養成のため、大学・大学院の教育・研究機能を強化する ⑨大学にふさわしい学習を促すシステムを導入する ⑩職業観、勤労観を育む教育を推進する ⑪教師の意欲や努力が報われ評価される体制をつくる ⑫地域の信頼に応える学校づくりを進める ⑬学校や教育委員会に組織マネジメントの発想を取り入れる ⑭授業を子どもの立場に立った、わかりやすく効果的なものにする ⑮新しいタイプの学校(“コミュニティ・スクール”等)の設置を促進する ⑯教育施策の総合的推進のための教育振興基本計画を ⑰新しい時代にふさわしい教育基本法を
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by churchandtate | 2006-12-19 10:05 | 説教・講演